「絶対顔見えないようにしてな。転んだりするなよ。」


吉井の言葉に、思わず言った。


「怖い…!」


吉井は、
自分の青色のジャンパーを私の頭へ被せた。


車へ乗り込むと、
私は身を隠すように座席の下へかがみ込んだ。



そのとき、
腰に繋がれたロープを握り
私を引率した若い刑事の手を、
血がにじむほど…強く強く握りしめた。


その刑事は、
少しの力で、私の手をぎゅっと握り返した―。


“ありがと…。”


誰かのぬくもりが、とにかく欲しかった。




力なく歩く私を、
担当さんは『3室』へと通した。


真っ赤に腫れた目―
少しの緊張と警戒を胸に、
うつむきながら部屋へと入った。


「今日からよろしくね〜。
…可愛いね。外国人?」

首を横に振った。
「日本人です…。」


「そうなんだ。で、何やったの?」


「私はほんとに何もやってないの…!

彼氏が…強盗とか、何かいろいろやってたみたいで―。

ほかに余罪もあるとかで…。

知らぬ間に巻き込まれて、
私まで容疑かけられてて…。

ほんとに、ほんとに何も知らなかったのー…」


そして再び、泣き崩れた。