パトカーの窓から流れていく景色に、
季節の変わり目を感じた。


初秋―
私の一番好きな季節だった。


現在と夢の狭間にいるような虚ろな目で、
私は何を見ていたのか…
よく覚えていない。



吉井が言った。

「彼とはどのぐらい付き合ってたんだっけ?」


「…3年です。」


「3年かー。じゃあ、結婚とかも考えてた?
まだ若いから、そんなことないか。」


「いや、考えてましたよ…。
彼は、ずっと結婚したいと言ってました。
一緒に住む家も、探していたところでした。」

はっきりとした口調で、
私はそう答えた。



勝己に愛されたというその真実を―
吉井に…
いや、自分自身へ示したかったのかもしれない。


「そっか。3年も付き合えば、そうなるわな。」


私の様子を見かねた吉井は、
勝己から話題そらした。


“吉井は、わからない男じゃないかもしれない…。”


警察嫌いの私でも、
少しだけそう思った。



警察署へ着くと、
2階の取り調べ室へと通された。


“勝己も今、ここに居るんだね―”


同じ建物の中なのに…
近くにいた勝己が、今はもう遠い。