部屋を出ると、
吉井と両親が立っていた。

「じゃ、行こうか。」

「はい…」



そのとき母が言った。

「彩乃…、これ持って行きなさい。」

母から手渡されたのは、
ポーチにたくさん詰められたナプキンだった。


“え?確かに生理中だけど…こんなに要らないよ。”


そう思ったが、
母のその表情を見ると…言葉が出なかった。


「お母さん、会社に、今日だけお休みするって連絡しといてもらえるかな?」


「……うん、心配しないで。」


その言葉によって、

“もしかして、帰って来られないの…?”

―私は、ようやく察した。


玄関でパンプスを履いたそのとき―
父が、私の右肩をポンと叩いた。


「彩乃、正直に話してくるんだよ。」


私はもう、父の顔を見ることができなかった。


ただただ、こころの中で叫んだ。


“私は何もしてないよ…。お願い、信じて!”


そして振り返ることなく、私は家をあとにした。