祖父母
父と母
ひとつ違いの可愛い弟―
家族6人で、ひとつ屋根の下に暮らしていた。



そして祖父は、
365日欠かすことなく酒を飲み続けた。


アルコール依存症、
そして、ひどい酒乱だった。




父も母も共働き―
1日のうちで祖父、祖母と過ごす時間が大半を占めていた。



酒が入らなければ、
優しく穏やかな祖父。


幼い私は、
アルコールはどんなひとをも変えてしまう―
そんな、とても恐ろしいものだと信じていた。



私は毎日、
祖父が酒を飲み始める17時20分になると、
祖父の隣で―
ひたすら母の帰りを待ちわびた。





車のドアと、
車庫のシャッターが閉まる音―


“おかあさんだ!”


うれしい気持ちを抑え、
母が玄関へ足を踏み入れる時をじっと待つ。



母の『ただいま』の言葉―
そんなあたり前のことが、
私にとってはうれしかった。



母が帰って来ないかもしれない―
そんな不安が、いつも私の胸を離れなかった。



それは、幼いながらに…
逃げ出したくなる環境だと言うことを、
よく理解っていたのかもしれない。