こうして、
1室4人での私の留置場での生活が始まった―。

人間の最低限の生活―

冷めた食事

お昼は毎日2個のコッペパン

室内にある、立てば丸見えの―
トイレットペーパーの設置されていないトイレ

明るい室内での睡眠

5日に一度の入浴

1日2本のタバコ

鉄格子

手錠

護送車


すべてが、
夢かドラマのようだ…。

『監獄』、『牢屋』―
そんな言葉がぴったり当てはまる。


毎日毎日…午前、午後と
厳しい取り調べの日々が続いた。

食事はのどを通らず、
私はとにかく痩せていった。


「日本の法律だとね、
1件につき、拘留は最高20日間なんだよ。
それから、起訴されるかされないか決まるわけ。」

同室の17番の言葉に、あらためて気が遠くなる―


“いつ出られるんだろう…。
起訴なんてされたら―ほんと、死のう…。”




これまでの人生を、
繰り返し繰り返し―
思い出し、そして考えた。



両親との関係

拒食症と過食症

これまでにしてきた、
数々の依存的な恋愛

大切な友人たちのこと

自分自身の在りかた



ひとは『峠』に立つとき―
これまでに歩いてきた過去の風景、
そして未来の風景の両方が目に映る。


過去の風景を切り捨てなければ、
新しい景色を見ることはできない。


私はまさに、
『峠』に立っていた。


そのとき私は、
ひたすら過去の風景を
じっと見つめ続けた―。