“これでもまだ人生は続くのか…”


本気でそう思った。




今日はいつもよりも薄暗い。きっと雨だろう。

“彼、好きだったなぁ…雨。”

―彼を想った。



「18番。」

この担当さんの声が、私を現実に引き戻す…。

「はい…」

そのとき私は、声に出せていたのだろうか。

それとも、ただこころの中でつぶやいただけだったのだろうか。


鉄格子の小窓へ近づいた。


「これ、こないだ18番が注文した下着。間違いなかったらここに指印ね。」


“こんな下着は小学生以来だ。
色気のかけらもない…。”


そんなことを思いながら、
左の人差し指に黒の印肉をつけ、押印した。


私の人差し指に残った黒―
担当さんから手渡されたハンカチで、強い力で何度もぬぐった。


「それじゃ、荷物に入れておくから。」

ガチャンと音をたてて、小窓が閉められた。