白く光る花びらが、静かに地面へ舞い降りる。
私も一緒になって桜を見つめていると、「綺麗だろ?」と微笑んだ。
「さっきの声の主って、あんたなの?」
訊いてみると、彼女は静かに横に首を振り、幹に触りながら言った。
「私ではない。この木だ」
「え…?」
この、桜の木――?
「この木は“思い出の宿り木”と言って、ひとつ思い出ができる度に、一輪の花が咲くようになっている木だ」
そうか、だから、オルゴールの音が聞こえたんだ。
「そしてここは、お前の頭の中の世界」
付け足すようにして、桜美夜行が言った。
頭の中の…世界……?
今日は、信じられないことばかりだ。
化け物に出会って、変な世界に来て、自分の頭の中の世界に引きずり込まれて…?
頭がついていけない。