以前、杏奈が言っていたことをふいに
思い出した。

『もし、なんてないんだよ。』
『ないから、考えないの。』

その時の顔と、今の顔があまりにも
似ていて。


「…。」

先輩も何か感じとったのか、先程までの
怒りはもうないようだった。

「その時は、また教えてくださいね。
今日はありがとうございました。」

何に対してのありがとう、なのかは
よくわからないが。


ふわり、と笑う杏奈に。

胸が高鳴った。