森井千春は、今までで1番、柔らかな嬉しそうな顔をしていて。






――ドキン


なぜだか、胸が高鳴った。





奴は、片手で私の顎を持ったまま、

もう片方の手を、私の頬に滑らした。







「ふ。真っ赤。」



甘い甘い声で、妖艶な笑みを浮かべながら、

そんなことを言うから。





さらに私の体温がぎゅんぎゅん上がった。




それでも、なんとか、背の高い奴を、

上目遣いに睨んだ。





「ま、真っ赤じゃ、ない!!!

ちょっと、赤いだけだっ!!!」



かなり無理のある嘘をつきつつ、

ギッと奴を睨み続ければ。





「へぇ?」


奴はニヤリと・・・意地悪そうな笑みを見せた。





頭の中で何やら警報が鳴り響いた。





《なんかヤバイ状況です!なんかヤバイ状況です!》



頭の中で、小さなおじさんがそう叫んだ。






って、小さなおじさん!?



おかしな思考にツッコんでいられたのは、

ほんの一瞬。





次の瞬間には。








奴に、私は耳を――ペロッと舐められた。