ガラガラ、と教室のドアを開ける。

「おはよう銀(ギン)!」

近くの男が笑ってくる。

それを見て僕はあからさまに眉間に皺をよせた。

「おい、お前まだ僕の名前覚えてないのか」

「そういう銀だって俺の名前覚えてないくせにー」

「お前が覚えてないなら僕も忘れる」

いいながら自分の席に座った。

なんでコイツが僕の前の席なんだろう。

早く席替えしないかな。

「俺は覚えてるぜ?」

「いつ僕が銀っていう名前になった」

「だってそれがお前のあだ名だろ?真銀(マシロ)」

「…チッ」

なにも言えなくて、少しの反抗として舌を打った。

僕の名前は色嶋 真銀(シキシマ マシロ)。

皆全く僕の名前が読めなくてポカンとしていた所、この目の前の男があだ名をつけたのだ。

ったく、なにがお前のあだ名だろ?だ、お前が勝手につけたんじゃねーか。

「で、俺の名前は?」

「…佐川信彰(サガワ ノブアキ)、女たらし」

「え?俺女たらしに見れてたの?酷くない?銀酷くない?」

「お前の周りにはいつも女がいるだろ」

頬杖をついた。

佐川は「いやいや、」と苦笑いしながら続けた。


「それ、お前もだろ」