「…ふぅん、なんか色々びっくりしたとこはあるけど、説明ありがと」
「どういたしまして。因みに何故女に戻らないかと言うと、女ってのがわからないからだ。だからこれからも男として見てくれたら助かる」
「…ど、努力はするけど、高校にはなんて言ってんだ?」
「ちゃんと説明してあるぜ、同じこと言ったら許してくれた」
「…母親の自殺って所でうちの校長が涙してそう」
「あ、よくわかったな?」
「だってよ、俺らが入学したときも泣いてただろ?あれ新年生全員動揺したからね」
思い出したように口元を緩ませる佐川。
そして僕も思いだし、笑う。
「あれは動揺よりドン引きの方が強かったな」
「ざわざわしてたよなーあれ!もう昔の事のように感じるわー」
あはは、と笑った声が部屋に響く。
「ああ、本当に。ところで佐川、今日泊まるのか?」
いつも僕の家に来たとき、佐川は泊まっていく。
今日はどうするんだか。
「…は?おま、俺にお前の実は女だった話を聞かせといて聞くか?そんな質問普通聞くか?」
変なものを見るような目で見られても。
「いつもと変わらないだろう、僕がお前に暴露した前もその後も僕は女で男に変わりはしない」
「俺の意識が変わるんだよ、てかもう変わってんだよ!俺の中でお前は僕っ子に変換されてしまった、もう手遅れ!だから俺は帰る!」
バッと立ち上がり鞄を持った佐川。
「別に強要はしねぇけど。あんま僕の事を女として見るなよ、キモいから」
「言葉遣いからして恩納には見えねーよ。問題は顔だ」
「それは無理」
「知ってる」
ドアを開いて廊下に出た。
玄関まで送ってやろう。
「それじゃあなー」
靴を履いた佐川に言う。
「また明日、銀ちゃん(はぁと)」
「気持ち悪い、電柱に頭ぶつけて死ね」
それじゃ、と言ってドアを閉める。
別にアイツなら言ってもよかったよなぁ。
ま、別にクラスの奴に知られてもいいけど。
どこまでも考えない僕は、リビングへ向かった。
明日も学校だ。
なにかねぇかなー、面白いこと。