「前も言っただろ、銀は時々女みたいな顔するって」
「ああ、だって女だし」
「…あんま女って言わないでくんない?変に意識しそうなんだけど」
しかめっ面で少し頬を染めながら僕を睨んだ佐川。
「変に意識?女なんてお前の周りにいるんだからそんなのしなくていいだろ」
それを横目に見た。
「それとこれとは別だ!今まで男友達だと思ってた奴が女なんて言われても現実感はないが、お前が女だと思うと俺がいけない事してる感じになってくるんだよ!」
「いけない事?なんだよそれ」
「お前も元男ならわかるだろ!?」
食べ終わったアイスの棒をビシッと僕に向けてきた。
「わかんねーよ。僕は元男じゃない、元々女であり、元々男だ」
向けられたアイスの棒をボキッと折り、ベットから起き上がる。
「あーあ、暇だなー」
「…おい銀、なんでお前男装なんかしてんだよ?女なら女のままでいいじゃねーか」
「ああ、説明した方がいい?」
「当たり前」
佐川はアイスの棒をゴミ箱に捨てた。
ガシガシと後ろ頭を掻く僕。
「僕の父が、ものすごく男を欲しがっていたんだって。けれど僕は女に生まれてきて、なんとか期待にそびえようと母が僕の事を男だと父に言ったらしい」
ああ、いい天気だ。
「男に育てられていて、そんなある日僕は父に襲われかけた。何故父は僕の事を男だと思っていたのに襲ってきたのかと言えば、父はバイだったから」
暖かい。夏はそろそろか。
「そして父に知られたことを母が知り、父を殺した」
「えっ」
「そして母は自殺。女なのに男として育てられた僕だけが残った」
やばい、眠くなってきた。
「その時僕は小6で、それから3年間施設でお世話になったけど、高校に入って…今年、施設を出て今現在親の保険金で一人暮らし、みたいな」
うとうとしてきた。
佐川いるからちゃんと起きてねーと。