「え、いいの?」
彼は目を輝かせて言った。
「うん。約束の印。」
「約束……?」
「うん。約束。ずっと一緒にいるっていう約束。」
「そっか、約束‼︎じゃあ僕もこれあげる‼︎」
彼はそう言って私にひとつの指輪をくれた。
「可愛い!」
早速つけてみた。
それは今思えば、可愛くもない普通のどこでも売ってる子供用の指輪。
なぜ彼が持っていたがわからなかったが、大切なものなのだろう。
「約束の印‼︎お揃いだよ。」
彼はニコッと太陽のような明るい笑顔で笑った。
とても可愛い笑顔だった。
知らなかった。
後で知ったことだった。
スイートピーには黄色の花はない。
近くに咲いていたのはただの造花。
花畑みたいだったけど…
昔の記憶だから無理もない。
あと、
スイートピーの花言葉。
ほのかな喜び 、門出、永遠の喜び
そして、
『優しい思い出』
ー10年後ー
「あー本当にうっっっざいんだけど‼︎」
「まぁまぁ、美香。そんな怒んないの。少しは落ち着きなよ。(苦笑」
7歳から10年後。
私は今17歳になった。
首からぶら下がってるのは
あの時もらった指輪。
私の大事な
『宝物』
「だってさー、香奈だって思うでしょ?前田うざいって!」
「まぁ、宿題は出しすぎだけどね…」
この子は私の友達の永野香奈。
スポーツは出来ないけど、勉強出来るし、なにより雰囲気が可愛い‼︎
「だよね‼︎あーこんなこと分かってくれるの香奈だけだわ。もう結婚してくれ」
「美香ったら。」
私の名前は神本美香。
勉強は嫌いだけど、スポーツはだーいすきな高校1年生。
香奈とは同い年で、
香奈のことがだーいだーいだーい好きな普通の女の子‼︎
「てか、美香よくばれないよね。その指輪。」
香奈が言ってるのはネックレスに通している指輪。
うちらの学校校則が厳しいから……
バレたら即、取り上げ確実かな☆
それでいて共学なのに恋愛禁止。
どんだけ昔の学校なんだっつーの‼︎
まぁ、好きな子はいないから関係ないけどね。
「あ、香奈着いたよ。」
香奈の家に着いた。
香奈の家はとても大きく、お城みたい。
まぁ香奈は俗に言うお嬢様。
羨ましいとは思ったことがないと言ったら嘘になるけど、
でも、家族は欲しいな。
「ありがとね。いつも送ってきてくれて。」
「いいよ。私が好きでやってることだもん。それに家近いし。」
そう。私の家の通り道に香奈の家はあるからちょうどいいんだよね。
「ふーっ。宿題頑張らないとな!」
香奈と別れた後にそっと呟いた。
香奈の家から私の家まで約10分。
私は両親を亡くし、孤児院に行ったがもう高校生だからという理由で
今は1人暮らしをさせてもらっている。
「今日は走って帰るか‼︎」
気分が落ち着かないときは、走る。
これが私の1つのルールだった。
「意外と早く着いたな。」
どこにもあるマンションの一室が私の家。
204号室。
「ただいまーー。」
元気よく誰もいない真っ暗な部屋へ挨拶。
やっぱり寂しいけど、もう慣れた。
「お父さん、お母さん、ただいま。」
父と母の写真を見ながらの挨拶。
これも日課でもあり、自分なりのルールだ。