葵がまだ高校一年生だった頃、本当に大好きな人がいた。
高校に入学して間も無い頃。
クラスメイトと申し込んだ私立高校フェスティバルの委員♪通称私フェス。
そこで同じ委員をしていたのが……ケンだった。
ケンは隣のクラスの男の子。葵好みの細身な体にサラサラの黒髪。
そして、誰にでも優しいケンに、アタシはあっと言う間にに惹かれていった。
ケンが音楽好きでギターが趣味だと聞けば、習っていたエレクトーンの腕を活かし彼の組むバンドにキーボードとして参加したりしたりして……。
だんだん学校外でも一緒に過ごす様になっていったんだ。
アタシにしては初かもしれない積極的な日々。
中学の頃も付き合ってた人はいたけど……クラスでイジメにあってたせい!?
自分に全然自信が無くなってた。
だから、そばにいれるだけでいいって思ってたんだ。
毎日が充実していて……ただそれだけで充分だった。
ケンの笑顔を見るだけで……アタシの心は癒されていったよ。
「アイツに近寄ると菌がうつるらしいぜ?」
「マジで??矢口菌かよっ」
どっと湧き上がるクラスメイトの笑い声。
今まではそんな事を言われてたアタシだったのに。
知らないからかもしれないけど。
ケンやバンドの仲間も、アタシを差別的に見るような事はなく……毎日が本当に幸せだったんだ。