こんなアタシを見かねた親は


「しばらく仕事は休んだら?」


そう言った。





アツシのせいで抱えた車のローンやらいろいろあったけど、とりあえずは甘えることに……。







  本当に


……全てが……


 限界だった。










する事がないからひたすらパソコンに向かう。





これって引きこもり?






検索するのは「ジサツ」の一言。





調べているうちに……ある日、不思議な世界にたどり着いた。



もうダメ、死にたい、そんな人たちがあつまる場所。



そこは「自殺系」と呼ばれる世界だった。









【一緒に死んでくれる人募集】





そんな会話が当たり前になされ、死にたい……そうホームページに綴ってる人が本当に消えてしまう。



ニュースで知ってる人が報道される。



マイナスな気持ちが人から人へ伝わっていく。




死の連鎖反応。





様々な死に方が網羅され、死ぬには精神科で貰える薬を何錠飲めば……なんて書かれたページを気がついたら夢中で開いてた。







ここにいる人達は仲間だ。






アタシもここの住人になって……そして死んでしまえばいい。



そう決めたら……。



不思議と気持ちが楽になっていったんだ。








たぶん。




今そんな世界を見たら





悲しくなってしまうと思う。






でもね……???





傷ついてるトキには






真っ黒で趣味の悪いページも






キラキラした世界に見えるんだ。






光輝く世界へ羽ばたく天使のように





アタシは、闇に吸い込まれる。





もっともっと高く飛びたい。





雲を突きぬけて……空の向こうへ。





そこにはきっと……幸せがあるハズなんだ。






とはいえ……じゃあ今からこのビルより飛び降ります!



……なんて



弱虫なアタシにそんな事が出来るほどの勇気はなかった。




そんな勇気があればとっくにこの世になんていないよ。



「親には……迷惑かけちゃいけないしね?」



壊れいたアタシには「死」が一番迷惑なんて事、全く気付かない。




後から知った事。



アタシはこの時アツシとの生活が引き金となり、摂食障害に加えパニック障害も発症していた。








「明日からバイト行くわ」



親に告げた偽りのバイト先……それは本当はソープランド。



この一線だけは越えてはいけない気がしてた。同じ風俗業でも最後を許すか許さないかで驚くほどの格差がある。


給料も……周りの視線も。



でも。


もう生きないんだったらドコでも一緒。


ヘルスより楽らしいよ?そんな話を聞いたから決めただけ。



本番をヤルかギリギリでヤラないか……それって実は大して重要な事じゃないのかもしれない。



親に払ってもらってるローン代、それにお葬式ってかなりお金がかかるって聞いたことあるし。


大学生の弟の為にも金銭的に迷惑はかけたくない。なんて考えてたらやっぱりお金は必要で……。





あとは……もう夢もないんだけど美味しいものぐらい最後に満喫して……。



その為に、手っ取り早く稼ぐにはやっぱりこの業界になってしまう。




死に急ぐアタシは止まらない。



そして、離れても離れても帰ってきてしまうこの世界。



慣れって……怖いね?








働きながら数件の精神科に通って睡眠薬を集めた。


精神科では治ったふりはしちゃいけない。


弱い薬じゃ効かないよ!!そう言って強い薬を貰わなきゃいけない。



「不安で眠れません……」



病院でケンの事を話せばそれが悩みの原因だと断定され……アタシは患者になる。



自分で思うよりも、妊娠で好きな相手を失い風俗で暮らす堕落したアタシは精神的に病んでいると……思われるらしい。




すべてがネットからの知恵。


アルコールと薬で眠ったまま逝く。それだけが希望。



そうやって成功した先輩たちがこの世界にはたくさんいる。



仕事から帰ると毎日ネットを開いては情報収集をした。



失敗談を読んだり、同じ気持ちの人のいる掲示板をのぞいてみたり。








そんなある日。






アタシは……こんな所で……運命の出会いをした。





パソコンを貰って1年以上たったとはいえホームページを見たり、メールを打つぐらいしかしてなかったアタシのキー入力は遅い。




だから入ってみようとも思わなかった世界。





それが「チャットルーム」





人が参加してるのを眺めた事はあったけど参加したことはなかった。




そこは、とある大手自殺系サイト。




今まで思ったこともないのに何故か気になったのはホントに偶然だった。



情報収集に飽きてたからかもしれない。




とにかく……理由はわからないまま、何かの衝動に突き動かされアタシそのチャットルームに「入室」した。







アタシのキー入力でついていける?



いろいろ不安だったけど。



仲間になれなかったら出て行けばいいしね?




ただ同じ想いの人とリアルタイムで話がしてみたかった。





たったそれだけの事。





冷えたビールを冷蔵庫から取り出し、くいっと飲み干す。



勢いをつけたアタシは……。


思い切って仲間に入った。







「初めまして~」



中には数人の人がいる。



その中にいたのが……「リュウジ」だった。






オトコの人3人にアタシ。



「あやさん初めまして♪」



とりあえず構ってもらえて……ほっとする。



「何話してたんですか??」



どうしたらいいのか分からず。でも頑張って会話に加わってみた。






みんな消えてしまいたい、そう願ってる。


だけど……友達とか身近な人には簡単に話せない。




それをお互いに話せる場所なんだなって思った。




「あやさんは……何で死にたいの??」




投げかけられる質問。きっと、ここではごく当たり前な会話。




うまく言えなくて。



「これ以上生きていく意味を見つけられないから」



そんな返事をしたような気がする。


これ以上生きて何があるの??


アタシにはわからない。