それでも……アタシを置いて日々は流れてく。


このもやもやが消えないのはわかってる。


わかってるから一生懸命働いてみる。



「泉」に飲みに来るお客さんは常連さんばかりですぐにみんなと仲良くなった。



キャバ時代とは違うアットホームな雰囲気にも次第に慣れてきて、時には一人でお店を任される日もあったりして。



マスターはデートだったり、隣の喫茶店で野球観戦だったり、そんな気楽さも嫌いじゃない。



常連さんは何人かいたけど……その中でも特に葵を気に入ってくれてた人がいたんだ。



それが原口さん。


35歳、某エリート企業勤務、彼女……ずっとナシ。



家の方向も近くてよく帰りに夕飯を奢ってもらう代わりに送ってあげたりしてた。




もちろんそれだけの関係。


原口さんはアタシの事が好きなんだろうケド気付かないフリして過ごしてた。


そんなのは長年お水で働いてきたアタシにとっては初歩のテク。