このままじゃボールを取られるのも時間の問題…と不意に人だかりに目を向けると、やっとのことで前に出られたのかホッと胸を撫で下ろすひなの先輩の姿が見えた




俺の姿を確認すると、状況を判断したのか、あわあわと慌てふためき、口元に手をかざすと、口をパクパクさせ何かを叫んだ




他のやつらの歓声などで何を言ってるのかまったく聞き取れないが、口の動きを見てなんとなくだけど、こう叫んでいる気がする





『頑張れ、沢城くん』





その瞬間、体中に力が溢れ、俺はその場から一歩引き、そのままシュートを打った




ブロックしていた相手チームの選手もさすがにここからじゃ入らないだろうと余裕な表情を見せていたが、そいつらの予想とは裏腹にボールは綺麗にゴールの中へと吸い込まれていった




ゴールに入った瞬間、ピーッと笛が鳴り、試合終了の合図を迎える





「試合終了!1-3の勝利」





先ほどまで敵チームが2点差リードだったが、俺の決めたスリーポイントが見事チームを勝利に導いた結果になった




まさかあそこでゴールを決められるとは思わなかったのか、コート内にいる選手たちは暫く固まっていたが、外野からは驚くほど大きな喝采が聞こえてきた




そんな人だかりの中、俺は一目散にあの人の元へと向かった





「ひなの先輩」





試合が終わりホッとしたのか、笑顔で佐久間先輩と会話をしていた先輩は突然目の前に俺が現れ、かなり動揺していた