「さむっ…」

バレンタインデー当日。

白くなった街で一人、とあるビルの前に私は佇んでいた。


17:40

時計の針は、なかなか進まない。


あいつの定時は17:15。

すでに25分が経過。元々そんなにすんなり出てくるとは思っていないものの…



「さむい…」


ただひたすら、さむい。

独り言を言いたくなるくらいには。



目の前のビルからはちらほらと人が出てくるのに、あいつの姿はまだ見当たらない。