「……ユリアは?」

どうにもその沈黙に耐えきれず、俺が口を開くとユリアがはっと俺を見、あたふたと喋り始めた。

「あ、えっと僕は……友達を殺しちゃって」

ユリアの言葉に俺を含めた三人がぴくりと反応する。その様子を見たユリアはますますあたふたとしながら言葉を続ける。

「僕、たまに記憶がなくなる事があるんです。今日は友達と二人で、僕の部屋で本を読んだりしてたんです。そうしたらまたふっ、っと記憶がなくなって。気が付いたら……」
「友達が冷たくなって転がってた……とか?」
歌音がそう言うと、ユリアはそうですと頷いた。

「友達の首に、コンセントの延長ケーブルが巻き付いてて、胸にはハサミが刺さってて……。ケーブルは取ったんですけど、ハサミは抜いたらきっと血が噴き出してくるだろうからそのままにして、どうしようか悩んでいたら、僕も目眩がして……気が付いたら、」
「ここにいた、か」

俺の言葉にユリアがまた、そうです、と頷いた。

「しっかし、汚職政治家に援交女子高生、友達を殺した少年、か……。揃いも揃って、変人ばかりだな」
「そういうあんたは何なのよ」

歌音が俺を睨みながら問いかける。俺の事情はまだ久米田にしか話していない事を思い出す。

「俺は、恋人と心中図ったんだよ」
「心中!?」
歌音が驚き、叫ぶ。ユリアも目を見開きこちらを見た。その反応に、なぜか俺まで自分のした事に驚き、口調がおぼつかなくなる。

「あ、ああ。ロープで互いの体縛って、ビルから飛び降りようとしたら意識がなくなって、久米田に起こされたらここにいたんだよ」
「へー……。何で心中なんかしたのよ?」

目をきらきらさせながら歌音が俺に聞く。
だめだ、こいつどっかのサナトリウム文学と俺の最期を混同させちまってる。