「おいアユムっ」

次の日、あたしはリョウ兄ちゃんを避けていた。

どうしてかって、そんなの。

ヨリ戻したって聞くのが恐いからだよ。

「聞こえてんだろっ?悪かったよ、昨日は」

相変わらず朝から素敵な笑顔だ。

これっぽっちも、あたしのキモチなんて知らないんだろうな。

「アユム、どうかした?」

「……ごめんね、リョウ兄ちゃん。約束してる人がいるの」

「え?」

「先行ってるね」

「あ、ああ」

細い路地の遠くから、ワタルがやって来る姿が見えたから。