「…ッヒ…うぅ…」

泣き止んだ頃、ワタルの姿が消えていた。

夕陽はすっかり落ちてしまっていて、随分あたしに付き合ってくれていたんだと気付いた。

「なに、アイツ」

ベンチにひとつだけ置かれたカップ麺。

食べろという意味なのだろうか。

毒でも入ってたりして?

さっぱりつかめない男だけど、いてくれてよかった。

泣くことができたから。

泣かせてくれたから。

毒舌もたまには、役に立つじゃんか。

「……謝ろう」

叩いてしまった手のひらを見つめて、呟いていた。