『これで行ってこいよ。墓参り』 『……いつか、返すから』 『楽しみだあ』 テツに助けられて乗った久々の電車。 親父の墓は他に何もない緑に囲まれている。 『ねえパパ……』 女の子の声が聞こえ、足を止めた。 親父の墓の前で手を合わす親子。 あの男が……? 『パパ、あの子誰……?』 すぐに逃げ出した。 目が合ったからだ。 誰だ――