いつもより潤んだワタルの瞳。 「ワ…タル……」 トクン― トクン― 「悪い」 もう、逃げられないと、思った。 あたしは、あたしの気持ちから。 この瞳に何もかもを奪われる予感が、本当はあったんだ。 だけど、あんまりにも不器用なワタルを、もう少し見ていたかった。 遠くから。そっと。 こんなに近付いたら何も見えなくなりそうで、恐かったから。 でも、思ったの。 この人の空っぽの心を埋めたいって――