「逃げんのか」
「…ねぇ…わかんねぇんだっ」
もう、分からないんだ。
どうしたらいいのか。
アイツの傍にいると、自分が自分じゃなくなるようで。
怖いんだ。
「お前の、言う通りだ」
ドサッと床に座り、そう言った。
テツには嘘などつけない。
「なあ、ワタル。俺はいいことだと思う」
「……は」
「お前がここを離れたいのは、ここが苦痛だからじゃない」
「なんだよ」
「分かるんだろ、埋まっていくのが」
テツは細い目で、笑顔とも泣き顔ともいえそうな表情をして言った。
胸に、手を当てて。
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