「あ、それと」

ガサガサと袋をのぞくと、

「これ。ひとつじゃ可哀想だからね」

小さな植物の鉢を取り出し、そう言った。

すでにこの部屋には西川アユムが持ってきた鉢が、キッチンの窓辺に置いてある。

「…うん。枯らさないようにしなきゃ」

嬉しそうにそう言うと、テツから鉢を受け取った。

「何が咲くの?」

「ひ・み・つ」

「あは…テツはつかめないな」

彼女は俺たちを名前で呼ぶようになっていた。

それがとても当たり前すぎて、なんの違和感もない。

俺だけがまだ、西川アユム、と認識していた。