~♪~♪~♪

「はい」

『俺~テツ~。今日は姫君頼むよ~』

「どこにいんだよ?」

『ひ・み・つ』

「……切るぞ」

『待てよ。分かったんだ、持ち主が』

「え…」

オープンカフェで過ごす時間は、案外退屈でもない。

大勢の客が訪れるから、俺はじっと観察する。

空にはどんよりと雲が広がっていた。

「ごめん、待たせて」

最近テツが“姫君”と言い出した、西川アユム。

慌てているのか、いつもより早足だ。

気を遣われないよう俺は、ペースを落とした。

次第に雨の音が近付く。

「ちっ」

大嫌いだ、雨は。