「美味しい?」

何度もそう聞いてくる。

よっぽど心配なんだろうか。

どう答えるべきなのかと、考える自分に気付いていた。

結局沈黙の後、

「うん」

とだけ返事をする。

安心したようにお茶を淹れる西川アユムは、すっかりこの部屋に馴染んでいた。

こんなまともな食事をこの部屋でする日が来るとも思わなかった。

「手、大丈夫?」

包帯をすぐに外した俺に言っているようだ。

「ただのかすり傷だ」

「…ありがと」

泣いたり笑ったり、忙しい女だ。