「よう、ただいま」

出ていったときとは打って変わって明るい様子で、周が病室に戻ってきた。

すると領主の容体を相当心配していた陽司が、勢い良く周に詰め寄る。

「周様っ、奥様のご病状は如何だったんですかっ?!」

「あー…うん、すげー全然大したことなかったよ。焦って損したな」

周はがしがしと自身の髪をかき混ぜて首を傾けた。

「そう、ですか…!それなら良かったですね」

うん、と安堵する陽司に相槌を打った周の顔が、悠梨には少し曇って見えた。

周に対して何か感じるらしい妹には、どう映っただろう。

「早速、人攫いに遭った風使いたちの捜索と実行犯の検挙に力を注ぐつもりだよ。あの調子ならあと数十年は心配いらないんじゃないか?俺の出る幕、ねえよ」

「周様…!」

陽司は咎めるべきか賛同するべきか、判断し兼ねたように周の名を口にした。

「それから母から二人に、言付かってきたよ」

「…領主様から?!」

まさか自分たちに言葉を掛けて貰えるなんて思いもしなかったから、悠梨は咄嗟に背筋を伸ばした。

すると周は、少し驚いたように眼を見開いてから苦笑いを浮かべた。

「今回の件では、対策が遅れたせいで多くの被害を生んでしまい非常に申し訳ないと…それから、二人が生き延びてくれたことと、その上貴重な手掛かりを齎(もたら)してくれたことに感謝している、ってな」

「…!」