本音を言えば父を捜し出して、逢ってみたいと思ったが――きっと母はこの機会を逃したら話をしてくれないかも知れない。

だから意を決して頷くと、厘も観念したかのように目を伏せた。

「…お前の父親は秋雨出身の、お前と同じ髪色をした青年よ。私より十六も歳下の…ね」

母と十六歳差。

ということは存命なら今年で四十二になる。

そして、白金の髪は確かに秋雨の国の人間に見られる特徴だ。

「驚いた?」

「…多少」

自嘲げに笑う厘に、周は言葉を濁した。

意外と言えば意外と思えるし、然して驚きを感じていないようにも思える。

何だか不思議な感じがした。

自身の髪色に関して、以前から憶測を巡らせていたためだろうか。

「気の弱い、お人好しよ。こんな歳上相手に誑(たぶら)かされて、騙されてしまうのだからね」

「誑かす、って…」

「相手は、私を春雷の領主とは知らなかったの。だから最後まで私の素性もお前を授かったことも、何も教えはしなかった。…本当は気付かない振りをしてくれていたのかも知れないけど」

周は、何となく相手が母や自分のことに気付いていたような気がした。

根拠は一切、なかったが。

それはただ単にそうであって欲しいという、自分の願望の顕れなのかも知れない。