和泉くんはやっぱりお父さんの会社に就職するらしい。
といっても、今まで海外の支社で働いていたから、転勤って形で入るらしいけど。

そして、今まで突っ込んで聞いてこなかったけれど、奏一くんも予想通り同じ会社に勤めている事が和泉くんとの会話で分かった。
しかも、和泉くんも同じマンションに暮らし始めた事を聞いて驚いた。

って事は、先日カフェで別れた後、結局和泉くんもこのマンションに帰ってきてたって事なのかと思うと、なんだか不思議だ。

奏一くんが前言っていた通り、マンションの何部屋かは社員用として使っているらしいけど、そのうちの一部屋がたまたま空いていたからだって和泉くんは説明していた。
広さもあるし、家賃も優遇されるからここは人気なのに入れてラッキーだったって。

「でも、奏一が付き合い出したなんて社内に広まったら、またそういう嫌がらせが増えるかもな。
こいつ影の人気者だから、それこそ陰湿な嫌がらせがまとまって襲ってきそうだし。
不幸の手紙とか届きそう」
「ああ……なんかそうかも」

前、奏一くんを看病しにきた岩上さんの事を思い出す。
確か、受付嬢だったハズだ。

「なんだよ、それももう経験済み? カッターの刃が入った手紙とか?」
「さすがにそれはないけど、一度だけ……奏一くんを好きだって人がここに来た事があったから」