「莉子はどうしたい?」

じっと見下ろして聞く和泉くんに、答えに迷う。

私が続きをしたいって言ったらしてくれるって事なんだろうか。

そう考えた途端、今までの高揚した気持ちが一気に収束して、悲しみに一転する。
今のキスは私がねだったからそうしただけで、和泉くんの意思はなかったのかもしれないと思ったから。

名前で呼ぶのも、キスするのも……そしてそれ以上の行為をしたとしても。
全部が私の勝手な希望であって、和泉くんは私のお願いに応えてくれただけ。
そういう事なんだろうか。

今の雰囲気に酔って、和泉くんの体温を求めるのは簡単だ。
本音を言えば、そうしたい。和泉くんに抱き締めていて欲しい。

だけど私は、一方通行の偽りの行為がしたいわけじゃないから。

「莉子?」
「……好きにして」

返事を促すように呼ぶ和泉くんを見つめて、もう一度口を開く。

「和泉くんの、好きなようにして欲しい」

瞳が戸惑いを浮かべたのは一瞬で。
すぐに困ったような微笑みが向けられた。