「いい歳して頭にこぶ作るかと思った」
「……ごめんなさい」

和泉くんの胸から響くのは、いつもよりも近い声と、私よりも落ち着いた鼓動。
間近にありすぎて、和泉くんの白いYシャツがぼやけて見える。

戸惑いながらも、今日は部屋着に着替えてないけどいいのかな、なんて思ってからハっとして顔を上げた。

「ごめんっ、もしかしたらファンデ……」

ファンデーションが今のショックでYシャツについてしまったかもしれない。
そう言いたかったのに、至近距離からの和泉くんの瞳に見つめられて声が出なくなってしまった。

近いって事くらい予想していたハズなのに、想像以上の緊張が私を襲う。

「ファンデ?」
「ファンデーションが……」

頭がクラクラする。
少し目を細めて聞く和泉くんは何も意識なんてしてないのかもしれない。

だけど、和泉くんの表情や体温、まだ背中に回ったままの腕。
全部が私をドキドキさせて、会話すらままならなくさせる。