彼女は志村に言った。

休み時間の教室がどよめいた。


俺は凍り、志村の顔が見る間に怒りでどす黒く染まるのを眺めていた。

次に、すべてを飲み込んで、俺たちを盛大に囃す声が三年A組の教室に満ちた。


俺はニセ浅川を睨みつけた。
彼女は何も聞こえていないように平然としていた。



その場ではノーコメントだった俺だが、放課後にニセ浅川をつかまえた。
屋上に連れて行き、勢い怒りをぶちまけた。


「なんだよ。休み時間のアレ」


「志村くんに告白された。付き合ってる人がいるって言っても聞いてくれないから」


「だからってみんなの前で言うか?おかげで今日一日さらし者だったじゃねぇかよ!」


「ははぁ、喜ぶかと思ったんだけど、失敗か。ちょっとキャラが違ったかな」


ニセ浅川は探求心を含んだ声音だ。


「そもそも俺が付き合ってるのはおまえじゃない」


「浅川芽有と付き合ってるなら、私だよ」


「おまえは浅川じゃない」


「じゃあ、私のことはメアリと呼べばいい」


「そういう話じゃないんだよ」


俺は苛立った。

彼女……浅川ではない……メアリの言うことは雲をつかむようで、はぐらかされているとしか思えない。


「もういい。どっちみち今日はおまえんちに行くから」


メアリが首を傾げた。


「やだ。急に彼女の家に来るなんて不作法」


「ふざけんな。俺の知ってる浅川を探しに行く。
駄目なら親御さんに話をする。
おまえが浅川の双子か何かだとしても、急に入れ替わってすましてるなんて、頭おかしいからな!」