一段登ると階段の奥がギイと軋む。

俺は集中して一段一段登った。

周囲から突然家族が現れることも警戒して目を光らせる。
あと少し。


その瞬間、俺のジャージのポケットからずるりと懐中電灯が滑り落ちた。

あ、と思ったときには、

ごとっと重い音が館に響きわたった。


俺は懐中電灯が転がらないように即座にしゃがんで押さえつけ、息を詰めた。

脂汗が頭皮を伝い頬に流れた。

心臓が早鐘を打つ。


きしっきしっと床を踏む音が聞こえてきた。


二階の廊下の奥からだ。

俺は全身心臓状態で、相手に鼓動が聞こえまいかと無意識に胸を押さえ、うずくまっていた。


暗闇に一筋、細く白い脚が見えた。


そして、現れたのはメアリだった。


「小諸くん」