台所へ音も無く侵入し、一階をそろそろと見てまわった。

広々とした浅川家はしんと静まり返り、俺は靴下を滑らせ音をたてないように歩いた。


一階にはリビングであろう洋間、台所と簡素なダイニングルーム、中庭に面したサンルームがあるのみ。
浴室やトイレは上の階らしく、見当たらない。


不思議と、この家にはまるで生活感がなかった。

台所は綺麗ではあったが、何週間も使われていないようだったし、リビングの古ぼけた家具には薄く埃が積もっていた。


そして家族写真や、この家の構成員が偲ばれるものは何ひとつ無い。



こんな家で浅川が育った?



そのことが俺には信じられない気持ちだった。


広い玄関まで来ると、正面に大階段がある。
二階探索のためには、どうしてもここを登らなければならない。