「え、えっと、あの……」



あたしはというと、突然すぎるこの展開に、完全に、混乱してしまっていて。

言葉にならない声をもらしながら、おろおろと、行き場のない手をさまよわせていた。



「……って、ごめん。いきなりこんなんされても、訳わかんないよな」



若干あせったようにそう言って、目の前の男の子は再びあたしの肩を掴み、体を離した。

唐突に離れたぬくもりに、なんだか無性に、さみしくなる。

彼の左耳につけられたピアスが、街灯を反射してキラリと光った。



「……と、トナカイ、なんだよね……?」

「……ああ、まあ」



改めてのあたしの質問に、男の子は観念したように頷いた。

そうして彼は、そっと右手で、あたしの頬に触れる。



「……俺が、店長に頼んだんだ。今日のバイト中、俺とあんたをふたりきりにしてくれって」

「え……」



まっすぐに、彼の瞳があたしを射抜く。

あたしはそんな彼を見上げたまま、動けない。



「──すきなんだよ。俺は、あんたが」

「……ッ!」



どくん。

今度こそ、心臓が止まってしまうかと思った。

かーっと、顔中に熱が集まる。

彼の手が、あたしの髪を梳いた。