「ですが…その…お慕いしている御方と離れるなんて…良いことではありませんでしょう…?」




下がる眉と弱々しい声色は、それが決して同情や傲慢でないことを示している。


ただただ静御前の身を案じ、義経の心を心配している彼女。

何の偽りもなく悲しみに顔を歪めることの出来る女。


正室の座に胡座をかくこともしない。

世継ぎを誰が産むとか、自分の地位がどうだとか。

そういったことは二の次で、それが出来るのがこの女なのだと義経は知っていた。


誰より自分を想っていてくれることを知っていた。