外はすっかり冬の空が広がっていた。

今にも雫を落としそうな重そうな暗い雲が空の大半を覆い、青い箇所はごく僅かしか見えない。

ひゅうひゅうと音を立てて木枯らしが吹き荒び、僅かにも残っていた木々の葉をすっかり散らして丸坊主にしていた。

色鮮やかな花が咲き乱れる暖かい季節とは一転し、色の少ない寒々しい景色がギディオン城の敷地に広がる。


午前中、マフラーにコートに帽子に手袋と、寒さ対策万全なもこもこした姿で外に出たエミリーは、リックといつもの護衛シリウス、それにラウルと昨日の護衛二人、総勢5人を引き連れてシャクジの森に出掛けた。

そこで少しの一悶着があったものの、小さな木を無事に手に入れて自室に戻ると早速飾り付けを始めていた。



ソファ前の低いテーブルに置けるほどに小さなツリー。

最初の計画では、もっと大きいのを手に入れて、塔の玄関に飾ろうとしていた。

冷たく寒々しいホールも華やいで見えて、訪れる方や使用人達の気分を高揚させてくれるはず。

そして、クリスマスを少しずつ理解してもらえたら、この先は皆で祝えるかもしれない。

そうしたら、何て素敵なのかしら―――


そう考え始めていたけれど・・・それは脆くも崩れ去り・・・。

このサイズでは方向転換せざるを得なくなった。


あの森の中のものは保護法に守られていて、門の外には何一つ出せないのだ。

そんなことも知らないなんて、わたしったらほんとうにダメだわ。

もっともっと勉強しないと。


この木は、リックさんが種から育てていたものを譲ってもらったもの。

派手さはないけれど、とても可愛らしくて気に入っている。

それに、この大きさで良かったのかもしれない。

このくらいなら、隠しておけるもの――――


高さ30センチほどのこれを、ここまで運んでくれたシリウスさんが何度も不思議そうに首を傾げた。


“エミリー様。これを、一体どうなさるのですか?”

“育てるの。素敵でしょう?”


毎年大きくなるのよ、そうすれば、とても楽しみだわ。

にっこり笑ってそう答えると、シリウスさんは理解できないとばかりに、ますます首を傾げていたっけ。


これは、今晩アラン様に見せるまでは塔の皆には内緒。

誰にも見せないの。

メイたちも何も知らないわ。

けれど。

森番のリックさんにだけは、この木を何に使うのか話してある。


“出来あがりましたら、是非お見せいただきたく願います”


しわの深いお顔をほころばせて、にこにこと笑う優しいリックさん。

彼に、何かお礼をしたいわ―――