「そう、か―――――」


呟くようにそう言ったあと、口元に手を当てたアラン様が瞳を伏せる。

何かを考えているみたいだけど、もしかしたら許してくれるのかしら?

ちょっぴりの期待を込めて、・・・アラン様?と呼ぶと、顔を上げてくれた。



「・・・私も、同行出来れば良いのだがな――仕方あるまい。入口付近のみだ。奥は、ならぬ。良いな?」


「本当にいいのですか!?嬉しい。入口付近だけでもいいわ。ありがとうございます!」



感謝の気持ちを伝えたくて、目の前の逞しい肩に腕をまわし、すべすべの頬に軽く唇を寄せる。

きっと、シャクジの森には手頃な木があるはず。皆が驚くような素敵なツリーが作れるわ。



「・・・明日、森番のリックに頼んでおく。彼に何でも申せ。良いな?」


「はい、ありがとうございます・・・・ぇ?あの、アラン様?」


どうしてなのか、いつの間にか身体が浮いていて、視界がゆらゆらと揺れている。

逞しい腕にしっかりと抱き抱えられていて、食堂の扉がどんどん迫って来ていた。

テーブルの上の、ふわふわの雪のような白いムースがどんどん遠くなっていく。



「・・開けよ」


アラン様が命じれば、自動ドアのように扉がすー・・と開く。


「あの、アラン様?・・・わたし、まだデザートが・・・それに、アラン様も珈琲がまだなのでしょう?」


それに、まだごちそうさまをしていないわ。



「構わぬ。部屋まで持たせるゆえ、後にゆっくり食せば良い」




―――あとで、ゆっくり―――?

それってつまり・・・どういうことなのかしら。

いつもお夕食の後は執務室に戻るのに。

それに、このあとメイとのお茶があるし、それに、それに・・・いろんな準備をしたいのに。

どうして急に――――



突然のことに思考がついてこない。

わたわたしながらはてなマークをたくさん浮かべてるうちに、アラン様は階段も廊下もすいすいすたすたと進んでしまって、あっという間に3階まで来ていた。


「暫くは、誰も近寄ってはならぬ」


警備兵にそう言って、一番奥の扉を開けば、豪華な広い空間が広がる。

その真ん中辺りにある、ふかふかのベッドの上にふんわりとおろされた。

そのままゆっくり倒されて逞しい体が覆い被さってくる。


「・・・今の時刻、君の部屋だとゆっくり出来ぬゆえ」

「ゆっくり―――って、あの・・・」

「もう良いな?・・・静かにせよ」

「そん――――ん・・・ん・・」



頬があたたかい掌に包まれて、ゆっくりと口づけが深まっていく。

熱く火照った身体を、強く優しく幾度も包まれて、焦らされて―――――・・・。




結局、そのままアラン様のベッドで眠ってしまって、ふわふわムースは、翌朝のデザートとなった。