サァァ……っというきれいな波の音に紛れて、なつの大好きな声が確かに聞こえた。
なつの呼吸が、一瞬止まる。
「え……?」
………なんで?
なつは今、自分が置かれている状況を上手く理解できないでいた。
目の前の光景が、微かにぼやけて見える。
だって……あまりにも突然すぎるでしょ。
「……なっちゃん」
なつがその場から動けないでいるのを見た本人は、困ったような顔をして笑いながら、
「びっくりした?」
なんてことを言ってくる。
………バカじゃないの?
本当に、ありえないよ。
一度フられた人にそんなこと言われたら、誰だってびっくりするに決まってるじゃん。