「怖い、んです……」


あれだけなりたいと願っていたのに、今は怖い。


大人になるということが、とても怖いの。


だって、自分が大きくなるたびに、大人になるたびに。


あの時の自分の行動が本当に正解だったのか、疑ってしまうから。


「大人になんて、なりたくない……。すごく、怖い……っ。なつは、あおちゃんの生きる時間を削っちゃっただけなのかなって。……ううん、あおちゃんだけじゃない。あおちゃんの家族の人生も、なつが……なつが全部、壊しちゃったんじゃないか、って……っ」


今まで冷静に振る舞っていたのに、もうそれすらもできないみたい。


なつの瞳からは、ポロポロとたくさんの雫がこぼれだした。


そしてその雫はなつの頬を伝い、真っ白な砂浜にあとを作っていく。