……だけど。
「……だけどそれは、なつの勘違いだったんですよね。きっとあの時一番つらくて苦しい思いをしていたのは、他の誰でもなく、あおちゃんのお父さんやお母さん、そして結衣ちゃんなのに」
「……っ」
「18歳になって、なつは心も体もあの頃より大人になりました。そして今、ふと思うんです」
なつは一回あおちゃんのお母さんから目をそらし、視線をキラキラきらめく海へと向けた。
「もしあの時、なつとあおちゃんが海に出かけてなかったら。なつが海に行くことを止めてたら。あおちゃんは、今も生きてたんじゃないかって」
幼い頃は、早く大人になりたかった。
ひとりで何でもできる大人に、すごく憧れを抱いてた。
なつはまた、あおちゃんのお母さんに視線を戻す。
あおちゃんのお母さんは、とてもつらそうな顔をしていた。