そしてなつと目線を合わせると、もう一度にこっと笑ってくれる。


「それに、今年も講演会のために中学校に行ってくれたんでしょ?」

「……え、なんで」

「結衣が教えてくれたわ。“今日、なっちゃんが碧お兄ちゃんのお話をしにきてくれるの”って。あの子、とっても嬉しそうにしてた」

「あ……」

「中学1年生の子に話をするんだから、結衣がその話を聞けるわけじゃないのにね。それでも、菜摘ちゃんの行動事態が結衣にとっては嬉しいんでしょうね」


お昼に見た結衣ちゃんの笑顔と泣き顔が、なつの頭の中をさまよう。


ふと、泣きたくなった。


「……あおちゃんのお母さん」


今すぐにでも溢れてしまいそうな涙を必死に堪えながら、なつはあおちゃんのお母さんを見る。