───サァ……サササァ……。


海辺にそっと立ちすくむなつの耳に、爽やかで優しい波の音が聞こえる。


君がなつの前からいなくなってもう5年。


この5年間はなつにとって、とても苦しいものだった。


「……菜摘ちゃん?」


5年間の月日を振り返ろうと砂浜にそっと腰を下ろしたとき、どことなく懐かしい声がした。


でもなつが振り向くより先に、その声の主はなつの隣にゆっくりと腰を下ろす。


「やっぱり。ここにくれば、菜摘ちゃんに会えるような気がしたの。……久しぶりね」


そしてその人……あおちゃんのお母さんは、なつを見てふわりと微笑んだ。