「ええ、ではここで、みんなに見てもらいたいものがあります」


授与式のことを思い出してまた泣きそうになったなつの耳に、担任の先生のそんな声が聞こえた。


……なつたちに見てもらいたいもの?


なんだろう。


不思議に思って先生に視線を移せば、先生は目を真っ赤にしながら寂しそうに微笑んでいた。


「今日、みんなのクラスメイトである高岡碧くんが、卒業式にこれていませんよね。実は……先生、碧くんのお母さんからビデオを預かってます」


さっきの静けさが嘘のように、一気に教室中が騒がしくなった。


もちろんそれは、なつも同じ。


心の中がガヤガヤとうるさく音をたてる。


「このビデオをしっかりと見て、碧くんの想いを受け止めてあげてください」


先生がかすれた声でそう言えば、教室はまた怖いくらいの静寂に包まれる。


先生はテレビの横に付いていたボタンを一回押して、ビデオを再生させた。