「………」
それなのに、お母さんは人形になったみたいになんにも言ってくれない。
それからしばらくして、
「……菜摘、落ちついて聞いてね」
突然、お母さんがなつを抱きしめた。
……え、なに?
………どうしたの?
なつを抱きしめるお母さんの腕がガタガタと震えていて、なつの胸の中にも不安が募る。
お母さんの口から出てきた言葉は、想像していた以上に、ううん、想像すらしていなかった言葉だった。
「碧くん……意識が戻らないんだって…」
「……え?」
「さっき碧くんのお母さんがきてね……。昨日の夜に発作が起きて、救急で病院に運ばれたんだけど、今も意識が戻らないって……」
体中から血の気が引いていくような感覚に陥った。