柄にもなく、俺は無駄に緊張していた。

それは、夜のS駅に来るのが初めてだとか、仕事のミスを愛川に怒られそうだとか、そういう理由じゃない。

俺が、愛川を好きだからだ。
その……、一人の女性として。


俺は今日、愛川に告白しようと思ってる。

だからこそ、俺はいつも愛川と一緒にいる時よりも、ずっと緊張してるんだ。

俺は、自分から想いを伝えた事が無い。

それは女性が引く手数多だったからじゃなくて、女に縁の無い、男臭い学生時代を過ごしてきたからだ。



しかし、ここにきて、俺は予定を間違えていたと分かる。

場所は日頃から混んでるS街。
おまけは今日は金曜日で、クリスマスイブときた。

目を向けなくても、仲良さそうなカップルが、そこらじゅうを歩いている。

良いな、俺もあんな風になりたいな。
俺なんて、想いを伝えるだけでも四苦八苦してるのに。



午後五時五十分になった頃、俺のスマホがメールを受信した。




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