彼女が目を閉じ、彼が悪戯そうに微笑む。
何するんだろ?
そのまま、彼が彼女の唇に、熱くキスした。
一気に、横で必死に謝る愛川の声が、遠くなる。
俺は呆気にとられて、若いカップルをまじまじと見る。
彼、度胸あるなぁ。俺なんて、告白の時点で困ってるのに。
やがて、彼女の顔が少し歪んでから、彼はそっと唇を離した。
…彼女、あんなに愛されて幸せだろうな。
「…で、行こう? 店閉まっちゃう」
愛川の言った言葉で、俺は我に返った。
慌てて愛川に頷いてみせ、俺はホームセンターの方に歩き出す。
スクランブル交差点で信号待ちをする視界の端で、あの若そうなカップルが、幸せそうに微笑み合うのが見えた。
ホームセンターへ行く途中、俺は愛川とどんな景品を用意するか相談した。
愛川は俺には思いつかないような意見を幾つも持っていて、聞いているだけで楽しかった。
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