「浩太さん!」
「うん?」
あたしは少し背伸びして、浩太さんの頬に軽くキスした。
浩太さんの顔が少し赤くなって、目を逸らされる。
大学に入ってから茶髪にした浩太さんの髪が、軽く揺れた。
「浩太さんも、あたしにキスしてくださいよ~」
あたしは浩太さんにおねだりしてみたが、返事は無い。
あたし、秋村心美(アキムラ ココミ)。日本人とフランス人のクォーターで、高校三年生。
そしてさっきキスしたのは、斉藤浩太さん。あたしの高校の先輩で、あたしの彼氏。
今日はクリスマスイブ。
あたしは高校から電車一本で来れるS駅で、放課後に浩太さんと待ち合わせして、買い物デートしている。
それだけなら、凄く幸せなデートなんだけど……。
あたしには、一つだけ不満があった。
浩太さんは、あたしにキスをしてくれない。
付き合い始めてから、もう一年以上が建つし。
あたしは浩太さんに、いっぱいキスしてるのに。
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