初めて、人に自分の作った和菓子をあげた。

それが高梨だったのはただの気まぐれか、それともその時既に高梨に惹かれていたからか。

反応を見るのは不安が大きかったけれど、口に運んだとたん、普段無表情の高梨の目が少し輝いたのがわかって、本当に嬉しかった。

自分の作ったもので人の表情を輝かせられたことの嬉しさもあった。

でも一番胸を占めていたのは、高梨のその顔をもう一度みたいという想いだった。

無表情の彼女の顔を自分だけが笑顔にできる、なぜかそんな自意識過剰なことをおもってしまって、それから毎日のように和菓子を作って持っていった。